同じ公園なのに、ある遊具の前では自然と子どもたちが集まり、別の遊具では一人ずつ黙々と遊んでいる。
そんな光景を見たことはありませんか?
「たまたま性格が似ている子が集まっているのかな」と思うかもしれません。
しかし、子どもたちのふるまいには、遊具や遊び場のつくりが大きく関わっていることが、少しずつ分かってきています。
遊具は「遊び方」だけでなく「関わり方」も示している
遊具というと”体を動かすための道具”というイメージが強いかもしれません。
でもよく見てみると、遊具にはそれぞれ暗黙のメッセージが込められています。
たとえば、
• 一本道で、遊び方がはっきり決まっている遊具
• どこから登ってもよく、遊び方に正解がない遊具
この二つでは、子どもたちの動きがまったく違います。
前者では、「順番を守る」「早く交代する」といったルールに沿った行動が中心になります。
後者では、「どうやって遊ぶ?」「一緒にやってみる?」といった子ども同士のやりとりが自然に生まれます。
どちらが良い・悪いということではありません。
ただ、遊具の形や配置が、遊び方だけでなく子ども同士の関わり方をそっと方向づけているのは確かです。
「協力する」「譲りあう」は、教えなくても身につく?
「思いやりのある子になってほしい」「協力できる子に育ってほしい」
多くの大人が、そう願っているのではないでしょうか。
けれど、こうしたふるまいは「こうしなさい」と言葉で教えるだけで身につくものではありません。
ある研究(James et al., 2022)では、1つの遊具を複数人で共有する環境にいる子どもほど、
• 順番を相談する
• 相手の様子を見て動く
• 自然に待つ
といった行動が増えることが報告されています。
これは”いい子になろう”と意識しているからではなく、そうしないと遊びが続かない環境だからこそ、自然と身についていくのです。
遊び場は、社会性が育つ“経験の場”にはなっているのではないでしょうか。
インクルーシブな遊具が、子どもたちの関係性に与える影響
インクルーシブな遊具についての研究では、
「できる・できない」で子どもが分かれにくい環境が、関わりの幅を広げる可能性が示されています。
誰か一人が主役になる遊びではなく、
それぞれが関われる余地があることで、
・勝ち負けが前面に出にくくなる
・役割が固定されにくくなる
・周囲と動きを合わせる場面が増える
といった傾向が報告されています(Wenger et al., 2024/Brown et al., 2021)。
結果として、「自分がどうするか」だけでなく「相手はどうかな?」と考える瞬間が増えていきます。
これは、インクルーシブな遊び場により、多様な人と関わる力が自然と育つ環境がつくられるということです。
まとめ:遊具は、性格を決めるのではなく可能性を広げている
遊具ひとつで、子どもの性格が決まるわけではありません。
でも、どんな遊び場でどんな関わりを経験するかによって、その子のふるまいや、人との距離感は少しずつ形づくられていきます。
遊具は、子どもを変えるものではなく”子どもが自分らしく育つため・可能性を広げていくための環境”です。
そんな視点で見てみると、いつもの遊び場が少し違って見えるかもしれません。
■参考文献
・James, M. E., Jianopoulos, E., Ross, T., Buliung, R., & Arbour-Nicitopoulos, K. P. (2022).Children’s usage of inclusive playgrounds: A naturalistic observation study of play.International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(20), 13648.
・Wenger, I., Lynch, H., Prellwitz, M., & Schulze, C. (2023).Children’s experiences of playground characteristics that contribute to play value and inclusion:
Insights from a meta-ethnography.Journal of Occupational Science, 31(3), 405–432.
・Brown, D. M. Y., Ross, T., Leo, J., Buliung, R. N., Shirazipour, C. H.,Latimer-Cheung, A. E., & Arbour-Nicitopoulos, K. P. (2021).A scoping review of evidence-informed recommendations for designing inclusive playgrounds.Frontiers in Rehabilitation Sciences, 2, Article 664595.
